積極的に参加する住まいづくりが求められる

2011.09.30

日本の風土や地域性を無視した無秩序な外観が日本中に広がっている現象を、一般のユーザーだけの責任に帰するわけにはいきません。日本の住文化形成において、きわめて大きな影響力を持つハウスメーカーは、全国津々浦々まで同じ材料の同じ建物を供給し売りまくりました。その結果、都市風景ばかりでなく、地方の農村風景まで激変してしまいました。長野県の山奥で見た光景を、私はいまだに忘れることができません。生まれ故郷に住まいを建て、東京から移り住みたいという建主さんがいらっしゃいました。町が造成し分譲した現地を見るため、長野駅から単線の飯山線に乗り換えて、40分ほど千曲川沿いに北上し、小さな無人駅で電車から降りると、文部省唱歌「故郷」のオルゴールがホームで迎えてくれました。そんな駅からさらに車で30分ほど山奥に入った小さな村は、「朧月夜」「春の小川」など、数々の名曲の作詩で知られる高野辰之氏の生まれ育った場所でした。歌詞に出てくるように、菜の花畑や、小川や、起伏に富んだ風景は、想像以上に素晴らしいものでした。しかし、建主の案内で分譲地に立ったとき、既に竣工した家々は、石やレンガ調の箱形住宅に、ブルーや黄色の塗装が施してある輸入住宅で、なんと東京のハウスメーカーが建てている住宅でした。美しい山里の調和を乱すちぐはぐな光景を見て、つくづく悲しくなりました。建築家の原広司さんは、今から30年以上前、1970年代頃のデベロッパーの宅地開発の有り様を「泣けてきそうな風景」と評しました。外の環境に、積極的に参加する住まいづくりが求められています。

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